診断について
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業
「繊毛障害による先天異常疾患群の患者データベース構築と臨床応用のための基盤研究」
「ジュベール症候群およびジュベール症候群関連疾患の診療支援と診療ガイドライン作成・普及のための研究」
診断基準
(診療ガイドライン2018より)
ジュベール症候群関連疾患
(有馬症候群を除く)Definite、Probableを対象とする。
A.主要症状
①精神運動発達遅滞
②筋緊張低下(主に乳児期)または運動失調の存在あるいは既往
③異常な呼吸(無呼吸、多呼吸、失調呼吸など)、またはその既往
④眼球運動失行・眼振・斜視など眼球運動の異常
B.検査所見
頭部MRI所見での神経放射線学的異常
①Molar Tooth Sign(MTS)を有する脳幹や小脳虫部の形成異常がある。
②MTSはないが、小脳虫部の形成異常がある。
C.鑑別診断
アーノルド・キアリー奇形、ダンディー・ウォーカー症候群、コーガン症候群、遺伝性及び孤発性小脳形成異常、くも膜嚢胞、脊髄小脳変性症を除外する。
<診断のカテゴリー>
Definite: Aの①②、Bの①を全て満たすもののうち、Cを除外
Probable:Aの①②③、Bの②を全て満たすもののうちCを除外、またはAの①②④、Bの②を全て満たすもののうちCを除外
<参考所見> 1.臨床所見 ①顔貌の特徴:突出した左右に狭い前額、高い弓状の眉、眼瞼下垂、広い鼻梁、大きな開口した三角の口、舌の突出、軽度の内眼角贅皮、上向きの鼻孔、低位で厚い耳介など。
②眼障害、腎障害、肝障害、口腔周囲の異常(口唇裂、分葉舌、舌・口唇結節、複数の小帯など)や指の奇形などを合併することがある
。 2.検査所見
①血液検査:貧血、腎機能障害、肝機能障害など
②尿検査:低浸透圧尿、高β2マイクログロブリン尿など
③眼底検査:脈絡膜・網膜欠損、網膜変性など
④網膜電図(ERG):反応消失または著減 ⑤腹部画像検査:腹部CT、MRI、超音波検査による脂肪肝、肝線維症、肝硬変などの肝障害や多発性腎嚢胞などの腎障害
⑥腎生検:ネフロン癆、腎嚢胞などの腎障害
⑦脳MRI:拡散テンソル画像での上小脳脚や皮質脊髄路における交叉の消失
3.遺伝学的検査
原因遺伝子として、これまで以下の35遺伝子が報告されている(2017年12月現在)。
AHI1、ARL13B、B9D1、B9D2、C2CD3、C5orf42、CC2D2A、CEP41、CEP104、CEP120、CSPP1、IFT172、INPP5E、KIAA0556、KIAA0586、KIF7、MKS1、NPHP1、NPHP4、NPHP5 (IQCB1)、OFD1(CXORF5)、PDE6D、POC1B、RPGRIP1L、TCTN1、TCTN2、TCTN3、TMEM67、TMEM107、TMEM138、TMEM216、TMEM231、TMEM237、TTC21B、ZNF423
有馬症候群
A.主要症状
Definite、Probableを対象とする。
①重度の精神運動発達遅滞
②乳幼児期から思春期に生ずる進行性腎機能障害
③病初期からみられる視覚障害(網膜部分欠損などを伴うことがある)
④顔貌の特徴:眼瞼下垂(片側あるいは両側性で症状の変動があることがある)、 および眼窩間解離、鼻根扁平、大きな口を伴うことがある。
B.検査所見
①頭部CT、MRI所見での神経放射線学的異常:Molar Tooth Sign(MTS)を有する脳幹や小脳虫部の形成異常、あるいはMTSはないが小脳虫部の形成異常がある。
②血液検査:貧血、高BUN、高クレアチニン血症
③尿検査:低浸透圧尿、高β2マイクログロブリン尿、NAG尿
④網膜電図(ERG):反応消失又は著減
⑤腎CT、MRI、超音波検査:多発性腎嚢胞
⑥腎生検:ネフロン癆
⑦腹部エコー検査:脂肪肝、肝腫大、肝硬変などの肝障害
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。ジュベール症候群、セニオール・ローケン症候群、COACH症候群
<診断のカテゴリー> Definite:Aの①②③④、Bの①全てを満たすもののうちCを除外
Probable:Aの①④、Bの①を全て満たし、Bの②〜⑦のうち4項目を満たすもののうちCを除外したもの
<参考所見>
1.臨床所見
病初期から脱水、成長障害、不明熱をみることがある。
2. 遺伝学的検査
原因遺伝子として、これまでCEP290遺伝子の特定の変異が知られている。
[注1] ジュベール症候群関連疾患および有馬症候群の診断には、臨床症状に加えて検査も必要となる。
[注2] 診断が確定しない疑い例については、他の疾患の鑑別も行いながら、JSRDおよび有馬症候群の診断に関わる定期的な検査を実施することが望ましい
有馬症候群 | ジュベール症候群 | デカバン症候群 | セニオルーローケン症候群 | コーチ症候群 | メッケルーグルーバー症候群 | |
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遺伝性 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 | 常染色体劣性 |
知的障害 | +重度 | + | + | ± | + | + |
小脳虫部欠損または低形成 | + | + | + | + | ± 後頭脳瘤 |
|
視覚障害 | + | ± | + | + | + | - |
眼瞼下垂 | + | ± | - | - | - | - |
腎障害 | + | ± | + | ± | ± | + 多嚢胞腎 |
肝障害 | + | ± | ± | + | 肝内胆管形成障害 | |
その他特徴的な所見 | 特に新生児期の呼吸障害 | コロボーマ | 多指症 |