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研究等

研究の成果

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業
「繊毛障害による先天異常疾患群の患者データベース構築と臨床応用のための基盤研究」
「ジュベール症候群およびジュベール症候群関連疾患の診療支援と診療ガイドライン作成・普及のための研究」

研究の成果

この研究グループでは、有馬症候群、ジュベール症候群およびジュベール症候群関連疾患について以下の課題に取り組んでいます。

(1)全国調査ならびに診断基準の検討 (2)患者データベースの運用  (3)遺伝子解析  (4)ジュベール症候群関連疾患診療ガイドライン2018の作成(5)発表文献等  (6)研究支援

(1)全国調査ならびに診断基準の検討
平成22年度に主に有馬症候群の全国患者数調査とアンケート調査を行い、国内に有馬症候群7例とジュベール症候群およびジュベール症候群関連疾患16例あることが分かりました(下表)。 これをもとに、有馬症候群の特徴をまとめ、診断基準を設けました(「診断について」を参照してください)。これらの疾患は稀なために、診断に迷うことがあります。 その際には、我々がお手伝いいたしますので、「診断支援に関するお問い合わせ」までご連絡ください。

有馬症候群とジュベール症候群およびジュベール症候群関連疾患の患者数(平成22年度調査)

有馬症候群 ジュベール症候群、
ジュベール症候群関連疾患
総 数
5主要症状をもつ患者数 7 0 7
JB2つ以上の主要症状をもつ患者数TS2 0 16 16
総    数 7 16 23
    アンケートに使用した、有馬症候群の5主要症状
  1. A 小脳虫部欠損
  2. B 重度の精神運動発達遅
  3. C 低浸透圧尿と小児期に発症し、進行する腎機能障害(嚢胞腎が比較的多い)
  4. D 乳児期からみられる視覚障害
  5. E 眼瞼下垂を伴う顔貌異常
  6. また、平成27年にジュベール症候群関連疾患の全国調査を実施し59例の情報を集めました。Molar tooth signの有無と主要な症状(A:発達遅滞、B:筋緊張低下もしくは失調、C:呼吸異常もしくは眼球運動異常)の有無に基づき、59人を以下のようにグループ分けをしました。
    ① Molar tooth signが指摘された群 39人
      ・症状がABC全て揃っている群  26人
      ・症状はACがあるが、Bはない群 4人
      ・症状はABのみか、Aのみがある群 9人
    ② Molar tooth signが指摘されなかった群 20人(うち4人は画像データなし。16人中、15人は小脳虫部の低形成もしくは欠損を指摘されています。)
      ・症状がABC全て揃っている群 8人
      ・症状はACがあるが、Bはない群 9人
      ・Cの症状がない群(ABの有無は問わない) 3人
     この59人の情報から、Molar tooth signは認めなくても小脳虫部低形成もしくは欠損を認める症例が15人(25%)と少なからず存在していることが分かりました。また、Molar tooth signを認めなくてもジュベール症候群関連疾患で同定されている遺伝子異常を認めた症例が存在していることから、新しい診断基準を提案し小児慢性特定疾病と指定難病に使われています。詳しくは、別記「診断について」をご参照ください。
    これらの疾患は稀なために、診断に迷うことがあります。その際にはご相談ください。

    (2)患者データベース
    有馬症候群、ジュベール症候群、ジュベール症候群関連疾患の患者さんの患者データベースをつくっています。 これは、本邦におけるこれら疾患の患者さんの治療や療育状況を明らかにし、諸外国との比較や共同研究などを行い、より効率的で最適な臨床対応をはかるためです。 また、このホームページを通して、これら疾患の最新医学、医療情報を提供するのに利用します。患者データベースを充実したものにするために、患者さんご家族及び主治医の方には、患者データベース登録をお願いします。詳しくは「データベース」をご覧ください。

    (3)遺伝子解析
    これまでに報告のあるジュベール症候群、ジュベール症候群関連疾患の24個の原因遺伝子について解析の準備をしています。準備が終わりましたら、お知らせいたしますのでしばらくお待ちください。また、有馬症候群の原因遺伝子を調べています。こちらについても適宜情報を公開いたします。

    (4)ジュベール症候群関連疾患診療ガイドライン2018の作成

    ジュベール症候群関連疾患診療ガイドライン2018

    (5)発表文献等
       1 論文
          1) Nationwide survey of Arima syndrome: Revised diagnostic criteria from epidemiological analysis.
          M Itoh, Y Iwasaki, K Ohno, T Inoue, M Hayashi, S Ito, T Matsuzaka, S Ide, M Arima
          Brain & Development, 2014 May;36(5):388-93. doi: 10.1016/j.braindev.2013.06.005. Epub 2013 Jul 8
          2) Arima syndrome caused by CEP290 specific variant and accompanied with pathological cilium; clinical
          comparison with Joubert syndrome and its related diseases.
          M Itoh, S Ide, Y Iwasaki, T Saito, K Narita, H Dai, S Yamakura, T Furue, H Kitayama, K Maeda, E Takahashi
          K Matsui, YI Goto, S Takeda, M Arima.
          Brain Dev. 2018 Apr;40(4):259-267. doi: 10.1016/j.braindev.2017.11.002. Epub 2017 Dec 6.

       2 研究報告書
          厚生労働省厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等研究事業 難治性疾患研究事業
          「有馬症候群の疫学調査および診断基準の作成と病態解明に関する研究」 総合報告書(平成22年度〜平成23年度)
       3 学会発表
          第55回日本小児神経学会     (札幌)2012年5月
          「有馬症候群の実態解明:全国疫学調査からの報告」
            第39回 日本小児遺伝学会        (東京)2016年12月
            「Joubert症候群および類縁疾患に関する全国調査」

    (6)研究支援
    1 研究費補助
         厚生労働省厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等研究事業 難治性疾患研究事業
           「繊毛障害による先天異常疾患群の患者データベース構築と臨床応用のための基盤研究」 平成24年度〜平成25年度
         厚生労働省厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等研究事業 難治性疾患研究事業
         「有馬症候群の疫学調査および診断基準の作成と病態解明に関する研究」 平成22年度〜平成23年度
         (財)小児医学研究振興財団 「有馬症候群の原因遺伝子の探求」    平成23年度
         日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業 「ジュベール症候群およびジュベール症候群関連疾患の病態解明と
         科学的診断・治療法の開発」 平成27年度〜平成29年度
         厚生労働省厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患政策研究事業))
           「ジュベール症候群とジュベール症候群関連疾患の診療支援と診療ガイドライン作成・普及のための研究」 平成28年度〜平成29年度
         厚生労働省厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患政策研究事業)) 
         「ミトコンドリア病の調査研究(ジュベール症候群とジュベール症候群関連疾患)」 平成30年度〜

       

    2 関連団体
         日本小児科学会 https://www.jpeds.or.jp/
         日本小児神経学会https://www.childneuro.jp/
         日本先天異常学会http://jts.umin.jp/

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